【重要度★★★★☆:全員が全員影響があるわけではないけど、働く主婦層を中心に影響がある人にとっては大きな制度変更。「制度の外」にいた人たちを“中に入れる”改革で、今後の年金制度の行方も含めて知っておくべき】

「106万円の壁がなくなるらしい」
そんな話題がX(旧ツイッター)でも大きな盛り上がりを見せました。
2025年5月16日、政府は「106万円の壁」を撤廃する内容を含んだ年金制度改革関連法案を閣議決定しました。
これまで、年収が106万円を超えた人だけが社会保険(厚生年金+健康保険)に入るルールだったのが、今後は、年収に関係なく加入対象になる人が増えていくという方向に進んでいます。
この報道に対し、ネットでは、「また搾取か」「勝手に保険料取られるのは嫌だ」なんて怒りの声もちらほら。
でもそもそもこの制度、ちゃんと理解して批判してる人って、どれくらいいるんだろう?
なんとなく“また増税かよ”“負担増でしょ”みたいな印象だけで広まってるけど、実際には仕組みがけっこう複雑で、よく分からないまま流されてる人がほとんどな気がする。
でもそれも無理ない。
「社会保険」とか「年金制度」って、聞いただけで頭が痛くなるレベルで分かりにくいし、そのうえ“壁”がどうとか、数字のラインがどうとか…言葉のハードルがやたら高い。
だけど今回の改正、一部の人にとっては、働き方そのものが変わるかもしれない話。
今回の記事では、「106万円の壁」ってなんだったのか、そしてそれが撤廃されたら何が変わるのか──。
制度の背景から、働く人への影響まで、やさしく整理していきます。
「106万円の壁」ってそもそも何?
「106万円の壁」って言葉、聞いたことはあっても、「それって税金の話?」「103万とどう違うの?」って、ちょっとモヤッとしてる人、多いと思う。
ざっくり言うと「106万円の壁」は、パートやバイトの人が社会保険に“入らなきゃいけなくなるライン”のこと。
つまり、働き方によっては、保険料が天引きされて手取りが減っちゃうかもしれないボーダーラインなんです。
社会保険に“入らなきゃいけなくなる”とは?
ここでいう“入らなきゃいけなくなる社会保険”は主にこの2つ:
- 厚生年金:将来の年金が増える(国民年金に“上乗せ”される)
- 健康保険:医療費の自己負担が3割になる、+αで手当もついてくる
この2つ、ふだんは正社員とかフルタイムの人が当たり前に入ってるやつなんだけど、
短時間で働いてる人は、条件を満たさなければ加入しなくてOKっていう仕組みだったんです。
そもそも社会保険の種類って?
ここがすごくややこしいところだと思うんですけど、そもそも社会保険は大きく年金制度と医療制度の2つがあります。
年金制度は老後とか働けなくなったときにお金をもらえる制度で、医療制度は普段病院にかかるときとかに診療費を国から補助してもらえる制度のこと。
それで、この基本的に日本人みんなが受けられるこの2つの制度だけど、正社員とかさっきの条件を満たしてるパートの人と、扶養に入っている人とか自営業の人とでそれぞれ微妙に制度が違う。
正社員や加入条件を満たすパートの人は、国民年金(これは基本全員が入ってるもの)に加えて、厚生年金+会社の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入していて、将来の年金も医療保障も手厚い。一方、自営業とか扶養内の人は、国民年金のみ+国保か配偶者の健康保険に入っているけど、自分で払うか、誰かの保険に“乗せてもらってる”状態で、若干中身が違うんです。
それぞれの違いはこんな感じ。
✅ 違いの内容
◉ 年金(国民年金と厚生年金)
内容 | 国民年金 | 厚生年金 |
対象 | 基本みんな(自営業・学生・扶養に入っているパートの人などはこっちだけ) | 正社員・加入条件満たすパート |
保険料 | 月約17,000円(自分で全額負担) or 配偶者が払う | 収入に応じた額で会社と折半 |
将来もらえる年金 | 月6.6万円程度(老齢基礎年金のみ) | 収入に応じて上乗せ |
メリット | 最低限の保障 | 将来の受給額が増える+会社が半分負担 |
◉ 健康保険(国保と会社の健康保険)
内容 | 国民健康保険 or 配偶者の扶養内 | 勤務先の健康保険(協会けんぽなど) |
加入方法 | 自分で手続き/配偶者の保険に入れてもらう | 会社が自動で加入手続き |
保険料 | 所得によって変動/扶養なら0円 | 給料に応じて計算/会社と折半 |
給付内容 | 医療費3割負担/高額療養費制度あり | 医療費3割負担+傷病手当金/出産手当金/出産一時金など充実 |
メリット | 自営業者や扶養に対応 | フルタイム並みに保障が整う・保険料負担が軽くなる |
今回で言う「社会保険に入る」っていうのは国民年金 → 厚生年金へ、国民健康保険 or 扶養 → 勤務先の健康保険へ切り替わるということ。
つまり「新しく払う」のではなく、「今までより手厚い制度に切り替わる」のが実態なんです。
✅じゃあどこから「入らなきゃいけなくなる」の?
「106万円の壁」と呼ばれてるのは、社会保険の加入条件のうち、“年収ライン”が約106万円だから。
でも実際には、次の条件ぜんぶを満たすと加入が必要になります:
- 週20時間以上働いてる
- 月収8.8万円以上(=年収で約106万円)
- 2ヶ月を超えて働く見込みがある
- 従業員51人以上の会社で働いてる(※これも今後なくなる予定)
- 学生じゃない
たとえば時給1,000円で1日4時間×週5日だと、月収は8.8万円くらい。
このへんを超えてくると、「はい、加入してねー」ってなるわけです。
なぜ“壁”を超えたくないのか
保険に入るってことは、保険料を払うということ。だいたい給料の1〜2割が天引きされます。
だから、たとえば…
月に8.8万円の人が、ちょっと頑張って月9万円稼ぐ
→ その瞬間、社会保険の条件を満たして加入対象に
→ 結果、保険料で1万円近く引かれて、手取りは逆に減る
…という悲しい展開になる。
「ちょっと多く働いたのに損した気になる」これがまさに、“壁”と呼ばれるゆえんなんです。
社会保険に入るメリットもある
社会保険に加入することについては「106万円の壁を超える=保険料が引かれる=損」みたいなイメージが強いけど、実はメリットもちゃんとあって、“保障が格段に厚くなる”ことがあげられる。
🧓 将来の年金が増える
- 国民年金だけだと、老後にもらえるのは月6.6万円くらい
- 厚生年金に入れば、ここに“現役時代の収入に応じた上乗せ”がつく
- 加入してた年数にもよるけど、月収10万円くらいでも数千円〜1万円ほど上乗せされるかも
しかも、保険料は会社が半分負担してくれる。
だから、自分で国民年金払うよりお得に積み立てられるってわけです。
🩺 医療や生活の保障もアップ
- 高額療養費制度:医療費が高額になっても、一定額でストップ(※国保にもある)
- 傷病手当金:病気やケガで働けなくなったら、給料の一部が最長1年半支給(※国保にはない)
- 出産手当金:出産で仕事を休んだときも給与の一部が支給(※国保にはない)
これらは、フルタイムの正社員並みに守られる内容なんです。
📌 会社が手続きしてくれるからラク
国民年金や国保は、自分で加入・納付しなきゃいけないけど、厚生年金や勤務先の健康保険なら、会社が手続きしてくれる&給料から天引きで納め忘れなし
とはいっても…
「保障が厚くなるなら、入ったほうが得じゃん」って思うかもしれないけど、実際には、多くの人が“あえて入ってない”現実がある。
なぜかというと…「扶養内」なら保険料ゼロで社会保障がついてくるから。
たとえばパート主婦の多くは、夫の扶養に入っていて:
- 健康保険証はもらえる
- 国民年金(第3号被保険者)にも自動で入れてる
- 保険料はぜんぶ“夫の保険料に含まれてる”扱い
つまり、自分では何も払ってないのに、ちゃんと最低限の保障は受けている状態。
もし社会保険に入ると、保険料で月1万円以上が天引き。
でもそれで得られる保障って、ほとんどは「将来の話」や「いざというときの話」。
それよりも今、
- 手取りを少しでもキープしたい
- 家計にはそこまで困ってない
- 病気になったらもう仕方ない
そういう価値観で動いている人が多いから、あえて“壁の手前で止める”という選択をしている人が多いわけです。
今回、何がどう変わるの?
ニュースでは「106万円の壁が撤廃へ!」なんて言われてるけど、実際に変わるのは2つの条件です。
もともと、社会保険に入るには次の5つの条件をすべて満たす必要がありました。
- 週20時間以上働いている
- 月収8.8万円以上(=年収で106万円以上)
- 2カ月を超えて継続して働く見込みがある
- 従業員51人以上の企業で働いている(※以前は101人以上)
- 学生ではない(夜間や通信制を除く)
このうち、今回見直されるのは②と④。
変更される要件 | どう変わる? | いつから? |
月収8.8万円以上(年収106万円) | 年収に関係なく加入対象に | 2026年10月〜 |
従業員51人以上の企業 | 企業の規模に関係なく適用に | 2027年〜段階的に、2035年に完全撤廃 |
今までは「106万円に届かなければ大丈夫」だった人も、週20時間以上働いていて、2カ月以上の雇用が見込まれれば、加入対象になる可能性がある。
さらに、「小さい会社だから入らなくてよかった」って人も、将来的には会社の規模に関係なく、社会保険に入らなきゃいけなくなるかもしれない。
今回の制度は一応まだ「閣議決定」された段階。
これは「政府が国会に出しますよ」というスタートラインに立っただけで、すぐに制度が変わるわけではありません。
ただ、今の与党(自民・公明)は衆参両院で過半数を持っているので、法案がこのまま成立する可能性はかなり高いと見られています。
こんなふうに政治と国会が絡んでくるんですね。
なんで今こんな制度いじってきたの?
今回の話を聞いて、「え、別に今のままで働けてるけど?」「なんで急にそんなことするの?」って思った人もいるかもしれません。
でも実はこの改正、政府にとっては“今やらないとヤバい”くらい切実な話でもあるんです。
表向きの理由:働きやすい社会にしたいんです(キリッ)
政府が公式に言ってるのはこんな感じ:
- 「働きすぎると損になる制度はおかしいよね」
- 「もっと働きたい人が、気にせず働ける社会にしたい」
- 「将来の年金が少なくなっちゃうのも避けたいしね」
つまり、“誰もが公平に働けて、ちゃんと保障も受けられる社会にしたい”というわけです。
たしかにこれ、理屈としてはわりとちゃんとしてます。
実際、年収106万円に届くかどうかで社会保険に入ったり入らなかったりって、制度としてはちょっと不自然。
でもその裏には、もっと現実的な“本音”がある
それが、社会保険の“支える人”を増やしたいという狙い。
というのも今の日本は、高齢者は増えるいっぽうで、若い働き手はどんどん減ってる。
このままだと、年金や医療を支える側の人が足りなくなって、制度そのものが立ち行かなくなるんです。
だから「今まで払ってなかった人」にも払ってもらいたい。
- 配偶者の扶養に入ってて保険料を払ってない主婦
- 小さな会社で働いてて条件を満たしてなかったパートやバイト
- 103万ギリギリにセーブしてた人たち
こういう人たちって、今までは制度の“外側”にいて、保険料を払ってなかった層なんですよね。
そこに対して今回、「条件を緩めてでも社会保険に入ってもらおう」「壁を壊してでも制度の中に取り込もう」っていう動きが始まったというわけです。
もうひとつの狙い:「働きたい人」を後押ししたい
あともうひとつのポイントは、“働き控え”をなくしたいという考え方。
これまでは、「106万超えると保険料引かれるから、シフト減らしとこ…」みたいに、制度のために働く時間をセーブしてた人がたくさんいた。
でも本当は、「もっと働きたいけど損したくないから我慢してる」って人もいるはず。
そういう人たちのブレーキを外して、少しでも労働力不足の解消につなげたいというのも、今回の改正の目的のひとつです。
だから、まとめると:建前は「みんなのため」、本音は「制度維持のため」っていう感じ。
今回の改正、表向きには「もっと働きやすく、ちゃんと保障も受けられる社会をつくる」っていうキレイな理由がついてるけど、その裏には「制度の外にいた人にも保険料を払ってもらって、年金や医療をなんとか維持したい」という現実的な事情があるわけです。
「壁」って結局いくつあるの?
「106万円の壁がなくなるらしい」って聞いて、「え、でも103万の壁とかもなかったっけ?」「130万ってのも見たことある」。……そう思った人も結構多いと思う。
実はこれ、“働く人がぶつかる壁”がいくつかあるせいで、話がごちゃごちゃになりやすいんです。
なのでここで一回、よく出てくる「3つの壁」をスッキリ整理しておきましょう。
① 103万円の壁:税金まわりの壁
これは一番シンプルで、「税金がかかるかどうか」のライン。
- 年収103万円以下なら、本人には所得税も住民税もかからない
- さらに、配偶者(たとえば夫)が配偶者控除を受けられる
つまり、「税金払いたくない」「扶養を外れたくない」って人がセーブするのがこの“103万の壁”。
② 106万円の壁:社会保険に入るかどうかの壁
今回ニュースになってるのがこのライン。
- 年収が106万円を超えると、一定の条件を満たした人は社会保険(厚生年金+健康保険)に加入が義務
- つまり、保険料が天引きされて手取りが減る
これが“損したくないから働きすぎない”調整につながってきたわけですね。
これが 今回の改正で、この年収106万円というラインがなくなる方向に動いてます。
とはいってもこのラインって、103万円までに収めてた人が多いと思うから、どこまで意識されていたのかは微妙なところではありますけどね。
③ 130万円の壁:扶養から外れる大きな壁
これはちょっと重い壁。
- 年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れます
- そうなると、自分で国民年金と国民健康保険に入る必要あり
→ 保険料も全額自分で負担することになり、一気に手取りが下がる+事務手続きも増えて大変。
だから、「130万を超えるくらいなら、働きすぎないでおこう」という調整もすごく多い。
壁 | 内容 | 変わる? |
103万円 | 税金がかかる・配偶者控除が受けられなくなる | ❌ 変わらない |
106万円 | 社会保険に加入義務が出る | ✅ 年収ラインが撤廃予定 |
130万円 | 配偶者の扶養から外れて自分で保険加入 | ❌ 変わらない |
今回変わるのは「106万の壁」だけです。
103万や130万のラインは今まで通り、変わりません。
じゃあ結局、誰に関係あるの?
今回、あまり関係ない人たち
まず、今回の制度改正で基本的に影響がないのはこのあたりの人たちです:
- 正社員やフルタイムで働いてる人
→ もともと社会保険に入ってるので、何も変わりません。 - 勤務時間が週20時間未満の人
→ 変更後も社会保険に入る条件を満たしていないので、対象外です。
関係が出てくるかもしれない人たち
では、今回の改正で“新たに対象になりそうな人”はどんな人たちかというと…
① 「106万超えそうだから」とセーブしてた人
- 年収が106万を超えないように、シフトを抑えていたパートやアルバイトの人
- 今後はこの「年収ライン」が撤廃されるので、気にせず働ける可能性が出てくる
→ 逆に言えば、もう“働きすぎ調整”しなくていいかもという変化。
② 時給が低めで、週20時間はしっかり働いてる人
- たとえば、時給1,000円 × 週21時間 × 月4週=月8.4万円、年収約100万円
- 年収は106万円に届いていないけど、週20時間の条件は満たしている
→ 今までは対象外だったけど、年収要件がなくなれば加入の対象になるかも。
③ 小さな会社で働いている人
- 今回の変更で従業員の数の要件がなくなる
- 週20時間以上働いて、年収106万以上稼いでいた人けど、小さい会社だから加入していなかった人が対象に
④「103万に抑えてるから関係ない」と思ってる人
今回はここの人たちが狙われてる。
たしかに、103万円に収めてるなら税金的にはセーフ。
でも、週20時間以上働いていたら、今後は社会保険の加入対象になる可能性が出てきます。
つまり、「年収はセーフでも、勤務条件でアウトになるかも」っていうのが、今回の改正のポイントなんです。
まとめ:余計な制度変更って感じる人が多いかも
「106万円の壁」がなくなることで、生活が劇的に変わる人は、たぶんそんなに多くありません。
でも一部の人にとっては、「これまで守ってくれてた“壁”が取り払われていく」──そんな制度変更でもあります。
今までは、
- 「106万円を超えると損だから」ってシフトを調整してた人
- 「扶養内だから保険料払わずに済んでた」って人
- 「働いてはいるけど制度の外にいた」って人
そういった人たちからもしっかり取ろうっていう流れになる。
もちろん、「もっと働きたいのに働けなかった」人にとっては後押しになるかもしれない。
けれど、「生活は今で足りてるし、保険料なんて払いたくない」って人にとっては、“余計な制度変更”になるし、こう感じる人の方が多いと思う。
税金も高いし、物価も高いし、生活はますます苦しくなっていく。
負担を減らす決定には慎重なくせに、負担を増やす決定はすぐにする。
もう少し国民の足元を見た政治をしてほしいものですね。
「ジブンゴト+」でもっと深く
どんどん負担が大きくなる社会保険料。
そもそも年金なんてもうずっと「払い損」になるって言われてて、それでもなんで払わないといけないのか疑問。
少子高齢化も進んでて将来年金制度が今のまま続くなんて到底思えないし、それならNISAで積立投資してた方がよっぽどいいんじゃないか。
「自分年金いらないんで、社会保険料取らないでください!」
若い人を中心によく聞くこの主張。
これについて考えてみました。

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