金利0.5%ってどういうこと?──「日銀の据え置き」で、生活は何が変わるのか

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【重要度★★★☆☆:あくまで「据え置き」だから今すぐ生活が変わるわけじゃない。でも“金利”について知っておくことは重要】

日銀、政策金利を維持 今年度0.5%成長に下げ 米関税で経済減速 - 日本経済新聞
日銀は1日開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%に据え置くと決めた。米国の関税政策の影響をふまえ、2025年度と26年度の実質国内総生産(GDP)の成長率が前年度比で1%を下回るとの見通しも示した...

「蛇口は、今回はひねられなかった。」

5月1日、日銀は政策金利0.50%の“据え置き”を全会一致で決定しました。
同時に、2025年のGDPと物価の見通しを下方修正
その背景には、トランプ政権の“逆風”──追加関税による景気の冷え込みリスクがあります。

でも、ニュースはここで終わりじゃない。

たった0.25%の金利の違いで、住宅ローンは月6,000円変わり、奨学金やiPhone、海外旅行の値段にまでじわじわ効いてきます。

金利ってそもそも何?
据え置きってどういう意味?
で、結局自分の生活にどう関係あるの?

今回は「なんとなく難しそう」でスルーされがちな“金利の話”を、自分の数字でわかるストーリーに変えてお届けします。

「金利」って結局なに?

「金利って、借金のときに払うレンタル料みたいなものでしょ?」
それ、正解。住宅ローン、奨学金、銀行の預金。
すでに多くの人にとって“金利”は身近な存在になっています。

だから「金利」って言葉自体はまあなんとなくわかる人が多いと思う。

でも、ニュースで出てくる「日銀が金利を据え置いた」という話になると、「それって、自分に関係あるの?」とピンとこない人も多いはず。

実はこの“日銀の金利”こそが、世の中のお金の流れを決める“見えない元栓”なんです。

銀行どうしにも「金利」があるって知ってた?

まず前提として、銀行って常にお金が潤沢にあるわけではありません
個人とか会社の人が「お金を借りたい」って言ってるのに、日によっては「今日ちょっと足りないな…」というタイミングもある。

そんなとき、銀行がどうするかというと──
別の銀行から“一晩だけお金を借りる”んです。
明日返すことを前提に、今日借りる。これを「無担保コール翌日物取引」といいます。

そのときに使われる金利が、正式には無担保コール翌日物金利(むたんぽ・こーる・よくじつもの・きんり)と呼ばれています。
ちょっと長いけど、ざっくり言うと:

💡 “銀行どうしの短期お金レンタル料”

銀行どうしの貸し借りに使われるこの金利が、高すぎず、低すぎず、ちょうどいい水準になるように調整しているのが日本銀行(=日銀)です。

この「ちょうどいい水準」こそが今回ニュースになっている「政策金利」と呼ばれるものなんです。

日銀は市場にお金を多めに流したり、逆に絞ったりして、この「無担保コール翌日物金利」を目標水準(政策金利)に保っているんですね。

「日銀が金利を据え置いた」ってつまり、この“銀行どうしの金利”を、これまで通りの水準(0.50%)にしておくように、市場への介入を変えなかった=蛇口をひねらなかったということなんですね。

銀行って日銀からお金を借りるんじゃなかった?

日銀は「銀行の銀行」なんて言われることもあるし、このように思う人もいるかもしれません。

たしかに、銀行が日銀と直接やりとりする仕組みもあります。
日銀にお金を預けると“付利金利”がついたり、どうしてもお金が足りないときには“基準貸付利率”で借りたりもする。

でもこれらはあくまで補助的な制度であって、どちらかというと最終手段としての意味合いが強い。
日銀からお金を借りるには担保が必要だったり、手続きが面倒だったりするんだよね。

でも銀行同士の貸し借りは「コール市場」っていう仕組みがあって、結構簡単にやり取りできる。
ニュースでいう「政策金利」は、あくまでこの“銀行どうしの貸し借り”に使われる金利のことなんです。

じゃあそれが、私たちの生活にどう関係あるの?

じゃあなんで日銀はこんな銀行同士の金利を上げようとしたり下げようとしたりするんでしょう。

実はこの「銀行どうしの短期金利(政策金利)」は経済全体に大きな影響があって、もしこれが上がると、

銀行が資金を調達するコストが上がる (原材料費が上がったイメージ)
→ 銀行からお金を借りる人(私たち)への金利を上げざるをえなくなる(企業によるけど原材料費が上がれば商品の価格を上げるよね)
→ 住宅ローン、奨学金、クレジット分割、全部じわじわ高くなる
→ 景気が落ち着く

逆に、政策金利が下がると

銀行がお金は借りやすくなり
→金利を安くして個人とか企業にお金を貸しやすくなる
→世の中にお金が流れやすくなる
→景気が温まる。

景気っていうのはざっくりいうと、人とか企業のお金の使いっぷりのこと。
みんながある程度お金を使ってくれてる(景気がいい状態)の方が、基本的にはみんなが儲かるし、お金がぐるぐる回っていい循環が生まれやすい

かといって景気が良すぎても、バブルの崩壊じゃないけど、どこかでドカンと経済が落ち込んじゃったり、格差が広がったりしてしまう。

だから、金利を操作することによって、景気をある程度調整しようとしないといけない。

つまり政策金利は、経済の温度をじわじわ調整してくれる“エアコンの設定温度”みたいなものなんです。

✅ 一言でまとめると… 「政策金利」とは、銀行どうしのお金の貸し借りの“相場”を日銀が調整している仕組み
それがめぐりめぐって、私たちのローンや買い物、物価や給料にまで影響してくるんです。

なんで今回据え置きになったの?

「え、金利ってまた上がるんじゃなかったの?」

最近なんでも値上がりしてるし、なんとなくそう思った人も少なくないはずです。
ニュースでも「利上げが続く」と言われていたような。
でも今回、日銀は金利を上げませんでした

カギを握ったのは“アメリカからの逆風”

今回、据え置きの背景にあったのがアメリカの追加関税です。
トランプ前大統領の再登場で、日本からアメリカに輸出される製品に高い関税がかかる見通しになりました。

そうなると、日本企業はアメリカでの売上が減るかもしれない。
企業の利益が減れば、給料(ベースアップ)にもブレーキがかかります。
給料が増えなければ、消費も鈍る──
そんな「冷えこみの連鎖」を、日銀は警戒していたんです。

日銀が下方修正した“景気の見通し”

今回、日銀は2025年度の経済の見通しをこんなふうに修正しました。

指標今年1月時点今回
実質GDP成長率+1.1%+0.5%
物価(コアCPI)+2.4%+2.2%

「思ってたより景気、伸びなさそうだな」
「物価も、そんなに上がらないかもな」
──日銀がそう判断した、ということです。

“上げない”という判断の意味

金利を上げるってことは、世の中のお金の流れにブレーキをかけること。
でも、景気がまだ回復しきってない今の段階でそれをやると、企業が投資を減らしたり、給料が上がりづらくなったりするかもしれない。(金利を上げると企業は銀行からお金を借りにくくなっちゃくからね)

だから日銀は、今はあえて動かさないという判断をしました。

「このタイミングで金利を上げると、景気の腰を折ってしまうかもしれない」
→ だったら、今は様子を見るほうがいい。

次は、「で、それが自分にどう関係あるの?」を見ていきましょう。
家賃、奨学金、旅行代、iPhoneの分割払いまで──
金利は、気づかないところで私たちの生活にちゃんと入り込んでいます。

今回の決定で私たちの生活はどうなる?

金利が「据え置き」になった──そう聞いても、正直ピンとこないかもしれません。
でも実は、この“何もしなかった”という判断にも、大きな意味があります。

たとえば今回、もし金利が0.25%上がっていたらどうなっていたか。
その影響は、住宅ローン、奨学金、円安、物価…さまざまな形で私たちの生活に広がっていたはずです。

今回はたまたま「変わらなかった」だけ。
でも次はどうなる?備えるきっかけとして、ここで4つの視点から見ておきましょう。

1|住宅ローン:月6,000円の差になることも

たとえば3,000万円の住宅ローン(35年・変動金利)を組んでいる人がいたとします。
もし今回、金利が0.25%上がっていたら──月々の返済額は約6,000円アップしていたかもしれません。
年間にすると72,000円。住宅ローンは契約などによって条件が大きく変わるので何とも言えないところではありますが、このようなことになるかもしれません。

✅ 今は据え置きだったけど、「変動か固定か?」は今のうちに確認しておこう。

2|奨学金・クレカ分割:返済がじわっと増える

奨学金(第2種など)やクレジットカードの分割払いも、変動金利に連動しています。
たとえば100万円の奨学金を10年かけて返すと、金利が0.5%→0.75%になるだけで、総返済額が1万3,000円ほど増えることも。

✅ たった0.25%の違いでも、カフェ1ヶ月分くらいの出費が増えることがある。

3|円安が進む=海外のモノ・体験が高くなる

今回の据え置きによって、金利差の大きいアメリカとのギャップが続いています。
→ 円高に進んでいたが、また円安方面に。そもそも数年前に比べるとベースがすごい円安。

• 韓国3日間のLCC旅行が、数千円〜7,000円ほど高くなる
• 新型iPhoneの価格が、数千円〜1万円アップ
• 推しグッズや海外通販の送料も、じわじわ割高に

✅ 推し活や海外旅行が好きな人ほど、円安の影響はリアルに効いてきます。

4|預金金利は…正直あまり変わらない

じゃあ「預けてるお金の利息」はどうなのか?
正直、メガバンクの普通預金金利はまだ0.02%前後。
金利が多少動いても、100万円預けて年間300円レベル。

✅ ただし、ネット銀行なら0.3%以上のところもあるので、預け先を変えるだけでも「地味に得」になる可能性あり。

まとめ:今回は「変わらなかった」だけ。けど、次に備える価値はある

今回の据え置きで、今日すぐに生活が変わるわけではありません。
でも、「もし上げていたら?」という仮定を考えるだけでも、未来の選択肢や備え方が少し見えてきます。

そして次、日銀が動くとき──それは、数ヶ月後か、1年後か。
そのとき「知っててよかった」と思えるように、“今”だからこそ、ちょっとだけ備えておく価値があるのかもしれません。

「ジブンゴト+」でもっと深く

今回、日銀の“据え置き”によって、金利そのものは動きませんでした。
なので、私たちの生活に直接影響が出てくるのはもう少し先かもしれません。

ただ、金利と切っても切り離せないもう一つの存在が「為替」

円高とか円安とかよくニュースになるけど、「金利」と「為替」がどう関係あるの?
そもそも「金利差」って何? それがどうやってiPhoneや海外旅行の値段に効いてくるのか?

言葉だけ見ると難しそうに感じるけど、仕組みを知ればニュースがより分かって面白くなる。
「金利」と「為替」についてもう少し深堀しました👇

金利が上がると円高に?──“金利差”が為替を動かすってどういうこと?|ジブンゴト+|須賀ゆめと
この記事ではJIBUNGOTOで公開している「金利0.5%ってどういうこと?──『日銀の据え置き』で、生活は何が変わるのか」を掘り下げていきます。 金利0.5%ってどういうこと?──「日銀の据え置き」で、生活は何が変わるのか金利0.5%って...

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