「“民主党”って書いたら、どっちの民主党に入るの?」──政党の“名前争い”が起きている理由

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【重要度★★☆☆☆;正直重要度でいうとめちゃくちゃ高いわけではないけど、確実に知っておいた方がいい話。貴重な1票が思ってる相手とは違うところに届いてしまう可能性がある】

立・国、略称「民主党」で競合 参院選、案分票大量発生か | 共同通信
総務省は7日、夏の参院選比例代表に向けて各党が届け出た略称を公表した。旧民主党の流れをくむ立憲民主党...

「民主党」って書いたはずなのに、思ってた政党に届かないかもしれない。
そんなちょっと不思議で、ちょっとややこしい話が、今、選挙の現場で起きようとしています。

2025年夏の選挙に向けて、立憲民主党と国民民主党の両方が「民主党」という略称を届け出ました。
こうなると、投票用紙に「民主党」とだけ書かれた票は、ふたつの政党で分け合われる(=按分される)仕組みになっているんです。

「え、それってアリなの?」と思う人もいるかもしれません。
でも実はこれ、ちゃんとルールにのっとった制度。
そして私たちはふだんから、“聞いたことがある名前”にちょっと安心してしまう生き物でもあります。

だからこの話、他人ごとじゃなくて、意外と自分の1票に関係してくる話なんです。

なぜこんなことが起きている?

“略称”と“按分”の仕組み

そもそも、なんで「民主党」と書いた票が、違う政党に分けられちゃうのか?
そのカギを握っているのが、「略称の届け出」と「按分(あんぶん)」というルールです。

選挙では、政党の正式名称じゃなくて、事前に政党が届けた略称でも投票できるようになっています。
たとえば、「立憲民主党」に入れたい人が「民主党」とだけ書いても、それは有効票としてカウントされます。

ただし、問題はここから。
今回のように複数の政党が“同じ略称”を届け出た場合、票は無効にならず、「按分」という方法で処理されます。

つまり、「民主党」とだけ書かれた票は、選挙区での得票の割合に応じて、複数の政党で“分け合う”ことになるんです。

たとえば、こんなイメージ:

  • 「民主党」とだけ書かれた票が100票あったとして、
  • その選挙区で立憲が60%、国民が40%の得票率なら、
    → この100票も、60対40の割合でそれぞれに配分される

これが「按分」という仕組みです。
制度としては、いちおう“公平”を保つ方法なんですが、
有権者の「この政党に入れたつもりだった」が、ズレてしまう可能性もあるんです。

なぜ「民主党」という名前を使いたがるのか?

ではなぜ、立憲民主党も国民民主党も、あえて同じ「民主党」という略称を使いたがるのか?
しかも、票が分け合われるリスクがあるのに──です。

理由はシンプルで、「“民主党”という名前には、今も票を集める力がある」から。

2009年、民主党は自民党から政権を奪い、戦後初めて本格的な政権交代を実現しました。
たしかに、民主党政権には批判も多くありましたが、“一度は政権を担った政党”というイメージは、今でも特に中高年層を中心に根強く残っています。

つまり、両党とも

「“民主党”って書いてくれる人は、今も一定数いる」
という前提で動いているわけです。

しかも、

  • 「立憲民主党」や「国民民主党」って、ちょっと長くてややこしい
  • 投票所で、「あれ、どっちだっけ……ま、民主党でいっか」となる可能性もある

こうした、“なんとなく”で書かれた票こそ、取りこぼしたくない(というか相手に渡したくない)。
だからこそ、「民主党」という名前を手放さないという判断がされているわけです。

実際、過去にも同じようなことは起きています。

2021年の衆議院選挙でも、今回と同じように、立憲民主党と国民民主党がともに「民主党」という略称を届け出ていました。
このときも「民主党」とだけ書かれた票は、得票率に応じて按分されています。

実際には、「民主党」と書かれた票は全国で362万票を超え、そのうち約295万票が立憲民主党に、約66万票が国民民主党に割り振られました。

大きな混乱が起きたわけではありませんが、

「ちゃんと投票したつもりだったのに、行き先がよく分からなかった」

と感じた有権者も、一部にはいたようです。 つまりこれは、「初めて起きる話」でも「めずらしい例外」でもありません。
制度上、ふつうに起こりうる話なんです。

投票する私たちは、どうすればいい?

こうなると気になってくるのは、「じゃあ、私たちはどう書けばいいの?」というところ。

答えはシンプルです。

なるべく略さずに、正式な政党名を書くこと。

たとえば、立憲民主党に入れたいなら「立憲民主党」と、国民民主党なら「国民民主党」と、フルネームで記入するのがもっとも確実です。

「民主党」と書いても無効票にはなりません。
ただし、どちらの政党を応援していたとしても、意図せず票が“按分”されてしまう可能性がある。

政党の正式名称って結構長いし、略称の方がなじみがあることもあるから意外と深く考えることなく、パッと書いてしまう人も多いもの。
でもたった数文字の略称で、あなたの1票の行き先が変わるかもしれないなら──
その数秒は、ちょっと丁寧に使ってもいいかもしれません。

ちなみに今後の選挙は…

今年予定されている主な選挙はこんな感じ。

  • 東京都議会議員選挙
    • 投票日:2025年6月22日(日)
    • 告示日:2025年6月13日(金)
    • 定数:127議席
    • 東京都内で行われる重要な地方選挙で、国政への影響も注目されています。
  • 第27回 参議院議員通常選挙
    • 任期満了日:2025年7月28日(月)
    • 投票日:通常、任期満了日の前30日以内に実施されます。
    • 改選数:124議席(選挙区74、比例代表50)
    • 全国規模で行われる国政選挙で、政党の勢力図に大きな影響を与えます。

各地方でいろいろと選挙はあるけど、大きなところだとこの2つ。

このうち、今回の「民主党」問題が関わってくるのは7月の参議院議員の選挙の比例代表。比例代表は政党の名前を書いて投票するけど、その時にこの略称でもいいよってなってる。立憲民主党、国民民主党を推してる人たちは注意して書いてくださいね。

まとめ

投票って、たった1票。
でもその1票をどう書くかで、届く先が変わるかもしれない。

「立憲民主党」と書いたつもりで、「民主党」とだけ書いたら、その票は、立憲と国民で分け合われるかもしれない
そんな制度があるって、知らない人も多いと思う。

だからこそ思うのは、「名前だけで選ぶ」って、私たちが思ってるよりずっと大きな意味を持つのかもしれない、ということ。

投票所で数秒迷ったとき、「なんか聞いたことあるから」じゃなくて、「ちゃんと届けたいから」書く。

その意識があるだけで、1票の価値は変わってくるはず。

「ジブンゴト+」でもっと深く

今回の「民主党」の略称問題。
“名前”って、思っている以上に人の行動や判断に影響を与えているのかもしれません。

別にこれって政治に限った話じゃない。

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